虫には何の非もありませんが、私は幼い頃から虫が苦手です。
触るのはもちろん、見るのもキツイです。
気がつけば生まれてからずっと、アスファルトの街でマンション暮らしをしています。
ベランダガーデンに憧れて何冊も本を読み、マンションのベランダや室内でガーデニングに挑戦したことも何度かありますが、いずれも虫の気配を感じると怖くなり、挫折してきました。
マンション住まいでは土を捨てるのも簡単ではありません。
ベランダの隅に放置された土やプランターは、出来ない自分の象徴のようでした。
そんな人間ですが、畑では植物を栽培でき、収穫して美味しくいただく生活を送っています。
それも、(たまたま近くにあったという理由で)無農薬・有機栽培の畑です。
畑に通い始めてまだ半年ですが、ベランダとは比にならないほどの数と種類の虫に遭遇しました。
虫の怖さを克服なんて、いまだに全くできていません。
ですが自分の経験から、虫が苦手な人へは、一般に手軽で初心者向けと言われるプランターによる室内栽培・ベランダ栽培より、自宅からちょっと離れた場所での露地栽培をおすすめします。
ベランダでダメだったのが、何故、より虫虫しい畑で収穫までこぎつけられたのか、考えました。
家庭菜園に興味はあるけれど、虫が嫌い・怖い・苦手で踏み出せない、と諦めている方へ、何かのご参考になりましたら幸いです。
畑では、虫との距離が十分とれる
生活圏からの距離
私が借りている畑は、自宅から自転車で15分ほどの所にあります。
どんなに畑で虫に遭遇しようと、ひとたび畑から離れれば、普段通りの虫の少ない生活圏に戻れます。
ベランダで虫に遭いますと、虫を退治できない人間は、虫が完全にいなくなるまで待つしかありません。
窓一枚隔てた先に常に虫の存在を意識して生活をすることになります。
おちおち布団も干せません。
というか、外干し不要の布団に替えました。
自宅から離れた場所で家庭菜園をするのは、通いの不便が生じますが、虫を恐れる人間にとってはその距離がメリットでもありました。
自分と虫との距離
畑では小さなスコップ1本では作業が追いつきませんので、長くて重いシャベルや鍬(くわ)を使います。
これがとにかくデカくて重いのですが、この鉄の武器が、虫を物理的に駆除するのに助かるのです。
よく、害虫は割り箸でつまみ取る、などと教科書にはありますが、虫が怖い人間には到底無理な接近戦です。
その点、鉄製の長いシャベルですと、虫との距離は1メートル以上は稼げますし、重すぎて虫の感触などという繊細な感覚は手元まで伝わりません。
虫を見つけたら、薄目を開いて遠~くからシャベルの先ではたき落とす、という技が、畑では可能です。
虫の死骸の処理が簡単
畑は地面が土ですから、虫も土に還せます。
鉄の武器で地面に落とした虫に、その辺の土をちょいとかぶせてダンダンダンっと踏み潰します。一瞬で片がつき、直接虫の死骸を拝むことなく捕殺できます。
土をかぶせてから踏むので靴底は虫に触れません。
履き物は畑専用の長靴ですので、普段履きが虫に触れるというおぞましい感覚は日常生活には持ち帰りません。
一方ベランダの場合、自力で虫を捕殺できたとして、その死骸をどう処理するのか、自分には想像するだにハードルが高かったです。
虫が普通に居すぎて驚き疲れる
人間毎回毎回新鮮に驚いていたら心臓が持ちませんので、脳が慣れるようにできています。
同じ虫に連続5回も遭遇すると、平気になるとまでは言いませんが、初回遭遇ほどの新鮮味が薄れてきます。
畑でよく見る虫とそうでない虫とでは、たった半年ですが受ける印象に違いが出てきました。
克服はしないがこんな感じ(無農薬の場合)
初めて畑の土を耕した時、土の中から何やら白や灰色の芋虫?幼虫?が数匹出てきました。
1匹見つけるごとに心臓が止まりそうでした。
その時、なぜか「ミミズが土を耕してくれる」的な説だけは知っていましたので、同じようにウニョウニョしているこの方々もなんらかの役割を土中で果たしているのだろう、と、そのままにしてしまったのです。
うむ、虫もがんばって生きている、と。
退治する勇気もありませんでしたし。
しかしその後、虫のいた箇所ばかり、植え直しても植え直しても、作物がまともに育ちませんでした。
幼芽は根元から倒れ、おかしいと思って掘り返してみれば根っこはほとんどなく。
あれは害虫だったんだなあ、と気づきました。
やっと日の目を見たかわいい芽が、たった数日で無残にも倒れてしまっているのを現実に目の当たりにすると、無性に害虫が憎くなります。
ここがポイントです。
虫は怖いけれど、駆除しなければまたやられてしまう、、、駆除するモチベーションが高まりました。
次に土作りするときは、根っこの虫を1匹たりとも残さないようにしようと。
半年後、人生2度目の土作りで、突如現れる虫どもに悲鳴を堪えながら、すくっては投げすくっては投げ、どうにかこうにか目に見えたものは全て駆除することができました。
同じ虫に遭遇するのは、初回から4回目くらいは恐怖ですが、5回目を過ぎた辺りで驚き疲れるというか、怖いのは変わりませんがそれより耕すのに疲れたりして感覚が鈍ってくるのか、初回遭遇の時ほどの恐怖はなくなりました。
アブラムシの群生も見るたびにゾッとしますが、被害の部分を虫ごとハサミでちょん切って地面へダンダンダンっです。
今のところ、虫に一切触れないで事足りています。
自分の力量では対応できない虫も当然出ます。
特に初見の虫は、インパクトが強すぎて辛いのと、動きの予測がつかなかったり、益虫かどうかの知識が足りなかったりでむやみに殺生できません。
そんな場合は秘技「放置」です。
大抵、虫の方から勝手にどこかへ去ってくれます。
居座る虫もいますが、お好きにどうぞ、と。
安全な自宅に戻ってお茶でも飲んで落ち着いてから、あの変な虫なんだったんだろう、と調べる気になったら、もう次に遭う時は知ってる虫になり、その先どうすべきか自ずと判断できるようになります。
家で思い出すのもキツイ場合は、何度でも振り出しに戻って放置から再開です。
前述のように、何度か遭遇するとインパクトは薄れますし、その虫が害虫かどうかは放置した結果の作物の様子から分かりますので、作物の被害を見たときの感情という新たな燃料を得て、自然とその後の対応へ繋がります。
なんだかんだで、慣れと地面とがあればどうにかなる、というのが実感です。
虫が苦手でない人から見たら他愛のない事でしょうが、自分としては半年前に比べたら格段の進歩です。
半年前にはいなかったミミズ(今度は本物)を見つけたときには、嬉しささえ感じました。
虫が怖いのは全く変わらないし、新たな虫を見つけてはギョッとする日々ですが、畑のおかげでほんの少し成長できたのではないかな、と思います。
虫が怖くてもできる!シェア畑のサポート
以上の経験から、虫が苦手な人へは、自宅敷地内での室内栽培・ベランダ栽培より、自宅からちょっと離れた場所での露地栽培をおすすめします。
貸し農園やレンタル畑は、公営・民営様々ありますが、私の通っている民営の『シェア畑』では、距離と地面の他にも、虫がこわい人に心強いサポートがあります。
ノウハウと設備が整っている
シェア畑には、
- 病虫害に強い品種の選定
- コンパニオンプランツ(一緒に植えると病虫害を抑える効果のある植物)の選定
- 地域の特性にあった施肥(せひ)計画(栄養が豊富すぎると害虫が出やすいそうです)
- 防虫ネットや自然農薬(トウガラシ焼酎液等)の常備
- 虫付きのままポイできる残渣捨て場
などなど、虫の苦手な初心者でも安心して土いじりを始められるノウハウや設備が整っています。
ベテランスタッフがいる
中でも一番大きいのは、菜園アドバイザーと呼ばれるスタッフの存在です。
菜園アドアイザーさんは、家庭菜園のご経験が豊富で、何を訊ねても丁寧に教えてくださいます。
私は一度だけ、跳ぶ系の虫の駆除がどうしてもできなくて、菜園アドバイザーさんへお願いしてしまったことがありますが、わけなく取ってくださいました。
人頼みは伝家の宝刀として、次は自力でなんとかしたいものですが、どうしても一人でにっちもさっちも行かなくなってしまった時には頼れるスタッフさんがいる、というのは本当に心強いです。
万が一心が折れてしまっても
万が一家庭菜園を続けられなくなった場合、放置すれば、普通の市民農園では他人の区画にご迷惑をおかけしてしまいますが、シェア畑ではおそらくですが、その辺は管理してくださっているようでした。
私のお隣の区画は当初、夏野菜の残骸のジャングルに草ボーボーといった放置状態でしたが、数ヶ月間私が草取りなどせずとも境界線から侵食してくることは全くありませんでした。
シェア畑ではオプション料金を支払えばスタッフにお世話をお任せすることもできますが、その場合ボーボーの区画内の方がきれいになるはずなので、お隣さんが特に境界の草取りなどのオプションを頼んだわけではないと思います。
スタッフさんが、放置区画による被害を周囲に及ばせない程度の最低限のお手入れをしてくださっているのではないかと思います。(実際どうなのか知ってしまうと弱い自分は安易に放置してしまいそうでまだ訊けていません。)
(ちなみに、ある日を境にお隣はさっぱりと整地されて新たな契約者さんが入りましたが、ジャングルがなくなったとたん我が家の作物に虫が増えて驚きました。近隣が草ボーボーというのは悪いことでもないんだなと思ってしまいました。)
虫に心が折れて万が一通えなくなっても、シェア畑ならば市民農園ほどのご迷惑をおかけせずに済むのではないか、という心の逃げ道情報でした。
シェア畑でなくとも、一度近くの市民農園を見学してみて、虫との距離感を体感してみるのがよいと思います。
きっと、畑なら意外にいけるかも?とお感じになるのではないでしょうか。
シェア畑の無料見学はこちらから
ちなみに、私は虫に驚くとどうしても脊髄反射で声が出てしまい、他の方を驚かせてしまうので、畑に行くときは、なるべく人に会わなさそうなタイミングで来園するようにしています。
趣味の貸し農園の利用者で虫がここまで苦手というのは、かなり少数派だと思います。
そんな人間でも、無農薬で立派なキャベツや甘いイチゴを育て上げるところまで到達できました。(失敗もたくさんしました、、)
同じように虫への恐怖がネックで園芸に躊躇している方へ、何かのご参考になりましたら幸いです。
これから夏に向けて、夏野菜の植え付けが始まります。
虫も活発になりますので、今まで以上に虫にビクビクしつつ、少しは慣れも期待して、初めての家庭菜園を楽しみたいと思います。
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